税金の滞納処分(強制徴収)と令状主義

 

 

 

 税金を滞納して、督促を受けて払わないと、財産が差し押さえられること等があります。

 税金の滞納者の財産から強制的に滞納された税金を回収することを滞納処分(強制徴収)といいます。

 滞納処分は、税務署の職員ら(徴収職員)によって行われます。

 滞納処分のため必要があるときは滞納者の物や住居などを捜索することができます。

 

 これらの手続は国税徴収法に規定され、地方税については地方税法で準用されています。

 

 

 ところで、我が国の憲法の第三章国民の権利及び義務には次の規定があります。

第三十五条  何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

 

 2  捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。
 1項の第三十三条の場合というのは、現行犯逮捕の場合を指します。
 2項の司法官憲というのは、裁判官のことです。
 つまり、憲法35条の1項は、誰に対しても住居や物を捜索したり押収(差押え)したりするには、現行犯逮捕の場合以外は、正当理由に基づいていて、場所や物が明示された令状が必要だと規定しています。
 さらに、憲法35条2項で、その捜索・差押は、権限のある裁判官が出す令状によって行うとされています。
 憲法35条によるルールを令状主義と言います。
 となると、疑問なのは、税金の滞納処分において、裁判官の令状無しで、
税務署の職員や地方自治体の税務課の職員が、滞納者の財産を捜索したり差押えができているのは
令状主義に違反するのではないかということです。
 つまり現行の滞納処分の制度は、憲法違反ではないかということです。
 この点について過去の裁判例も無いようです。
 任意の質問・検査については最高裁の判例(昭和47.11.22)があり、その中では、
憲法35条1項の保障は刑事手続に限定されるわけではないことは言及されています。
 憲法や税法の教科書などで、令状主義と滞納処分の関係についてよく取り上げられるようなものではないようです。
 私の手元の書籍では、言及はありません。
 憲法学者からすると、憲法35条あたりは、憲法のメジャーなところというより刑事法で議論されるようなとことなのでしょう(偏見)。刑事法の学者からすれば、憲法35条と税法との絡みは興味ないしでしょう(偏見)。
 税法の研究者は、徴収手続の中での憲法の絡みには憲法分野で議論すればいいと思っているのかもしれません(偏見)。
 税務訴訟で争われたことはあったのかもしれません。そうであれば、公刊される判例になったり、教科書的にメジャーな論点にはならなかったのかもしれません。
 その点についての論文を書かれた研究者がいれば、私の不勉強をお詫びします。
 過去にどの程度の議論があったにせよ、
上記の憲法上の問題の他に、現行の滞納処分の制度やその運用には、国民の財産を保障する観点から問題が多いと思います。
 立法的な検討・改善も大事ですし、裁判を通じて改善していけることもあると考えています。
 機会があれば、上記の点についても最高裁判所の憲法判断を求めてみたいです。

 

 

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弁護士 林 朋寛

(札幌弁護士会所属)

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