法律相談センター経由の受任の上納金

 弁護士は、事務所のある場所を管轄する弁護士会に必ず加入しなければなりません(強制加入)。

 弁護士会は、地方裁判所に対応して置かれています(東京だけは3会あります。)。

 各地の弁護士会には、法律相談センターがあります。無いところは聞いたことがありません。

 

 札幌弁護士会にも法律相談センターがあります。

 札幌弁護士会の法律相談センターだけは、相談料(業界の相場としては30分5000円)が完全無料です。

 つまり、相談者の資力や相談の分野に関わらずに、相談は無料となっています。

(私は、弁護士会が無料相談をすることも問題と考えていますが、今回は置いておきます。)

 

 

 弁護士による法律相談では、様々な悩み・問題を相談して、相談だけで整理・解決される場合もあります。

 しかし、相談内容によっては、弁護士に依頼して交渉や訴訟をやってもらわないと解決できないものもあります。

 弁護士会の相談センターで相談を担当してくれた弁護士に引き続き依頼することができます。

 そもそも、弁護士会のセンターに来られる方は、他に相談する弁護士を知らないという方も少なくありませんから、

相談で担当した弁護士に依頼するのがある意味自然な流れになります。

 

 依頼する場合の弁護士費用(着手金・報酬金)は、その弁護士が提示したもので相談者がよければ、委任契約を結んで依頼することになります。

 問題は、この場合の弁護士費用についてです。

 法律相談センターで相談を受けた事件を受任する場合、受任する弁護士は、その着手金・報酬金から法律相談センターに一定割合を事務手数料として納めることになっています。

 

 

 このように弁護士が受任した場合の弁護士費用から弁護士会・相談センターに一部を納めさせるのは、札幌弁護士会だけの制度ではありません。

 私が東京弁護士会に所属していた10年ちょっと前では、東京弁護士会の法律相談センターが弁護士費用の金額を審査して、一部を納めさせていたように記憶しています。現在では、どうなっているかは知りません。

 他の某弁護士会でも、そのような制度があるということを聞いています。

 

 沖縄弁護士会では、そのような制度は、少なくとも昨年くらいまでは、無かったと思います。

 

 

 弁護士費用の一部を納めさせる制度の問題は、例えば、直接に事務所に問い合わせをしていただいた場合などの通常の場合は着手金30万円で受任するような事件を、法律相談センターに納めることを勘案して、着手金35万円とするといったように、センター経由の依頼者に、納める分を上乗せした弁護士費用を請求することが想定されることです。つまり、上納分を依頼者に実質的に負担してもらって、なおかつ、そのことが見えにくいことになっているかもしれないということです。

 なお、法律扶助の事案(資力の無い人に弁護士費用を立替援助する場合)は、今のところ、事務手数料は掛かっていないそうです。

 

 

 弁護士は、民間の自営業者ですから、事務所の維持の経費や生活費を確保するために、受任する事件の弁護士費用もそれなりにシビアに算定します。

 本来であれば30万円の費用を見込めるところを、自分でセンターに納入する分を負担して、依頼者に通常の費用で見積もるとは限りませんし、期待できません。

 

 

 札幌弁護士会は、そのような上乗せの対応を望ましくないが関知しないという姿勢のようです。

 

 

 民間のサービスであり、弁護士費用の値決めは弁護士の自由です。弁護士費用まで弁護士会が決めるべきというのではありません。

 

 

 最も問題なのは、相談料は無料などと言っておきながら、依頼する場合にはもしかすると高めの弁護士費用が掛かる可能性がある制度だということが相談者に知らされていないことです。

  

 

 弁護士会(の担当の役職者)は、法律相談センターは人権擁護・社会正義の実現が主目的だなどと言っていますが、そういう制度にして相談者にデメリットを知らせないでおきながら、偉そうに人権擁護などと言える神経が私にはさっぱり分かりません。

 

 

 私は、次年度から法律相談センターに登録する予定です。こういうブログをあげていると、どういう扱いをされるか分かりませんが。

 

 

 

〒060-0003 札幌市中央区北3西7 1-1 SAKURA-N3

北海道コンテンツ法律事務所

電話070-5530-0884

弁護士 林 朋寛

(札幌弁護士会所属)

http://www.sapporobengoshi.com

ブログ http://bit.ly/2eOFTn8