内閣の衆議院解散権

 官房長官が、「解散は首相の専権事項だ。首相自身が一番タイミングがいい時に考える。」と発言したそうです。

 この発言内容は、大きな誤りが二つあります。

 

 

 まず、衆議院の解散権があるとすれば、首相(内閣総理大臣)にあるのではなく、内閣にあります。

 衆議院の解散は、憲法上で明文で定められているのは、内閣不信任案が可決された場合です。

 

 

第六十九条  内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
 衆議院の解散は、国事行為として天皇が内閣の助言と承認に基づいて行います。
第七条  天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
     衆議院を解散すること。 

 

 内閣不信任案が可決された場合ではないのに衆議院の解散を認めるのは、内閣の助言と承認に実質的な決定権を認めて、現在では内閣に実質的な解散権が慣行上認められているからです。

 そして、その解散権は、内閣総理大臣ではなくて「助言と承認」を行う内閣に認められる権能です。

 内閣は、行政権を持つ合議制の機関です。

 

第六十五条  行政権は、内閣に属する。

 

 

第六十六条  内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
 ただ、内閣総理大臣には、任意に国務大臣を罷免する権原がありますから、衆議院の解散に反対する大臣がいれば辞めさせることができます。
第六十八条  
 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。 
 反対する大臣を罷免できるから、首相に解散権があると言ってしまったり、首相に自由な解散権があると思い込んでしまうのは誤りです。
 解散権を行使するのは、内閣ですから、その合議を経て解散の是非を検討しなければならないはずですし、理由あって反対する大臣を罷免するプロセスには大きな政治的な意味が生じます(罷免に関しても総選挙等で問題になり得るでしょう。)。
 次に、首相が1番いいタイミングで解散できるという思い上がりが問題です。
 解散は、全国民の代表である衆議院議員全員の身分を奪い、国会を閉会して、総選挙を実施することになりますから、国民生活や政治に大きな影響のある行為であって軽々に行ってよいものではありません。
 首相の個人的な都合や与党に選挙が有利といったような思惑でする解散は不当であって、そのようなことを認めるような発言・態度は厳しく批判されるべきです。
 なお、現行の衆議院の小選挙区の区割は、憲法上の投票価値の平等の要請に反する状態です(最高裁判所平成27年11月25日判決)。この是正をしないまま、解散して総選挙を行うというのは、主権者国民の選挙権の価値を蔑ろにした無責任なものというべきです。
 その是正ができないまま選挙することになったのであれば、国会の無能を証明したものといえるでしょう。本来は、その無能の責任を取って、与野党の幹部、特に多数派を形成していた与党の幹部は政界引退すべき事態なんだと私は思います。

 

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