『あたらしい憲法草案のはなし』と『憲法主義」

 参議院選挙の投票前にはあまり争点にされなかった憲法改正の動きが進むかもしれない状況です。

 自民党の憲法改正草案について解説した本はいろいろ出ていますが、自民党の憲法改正草案を爆発的にひろめる有志連合(自爆連)の『あたらしい憲法草案のはなし』は、日本国憲法公布の翌年に文部省が製作・配布した『あたらしい憲法のはなし』の秀逸なパロディーです。

 このあたらしい憲法草案のはなし』は、自民党の憲法草案が、立憲主義(憲法により国家権力を制限して個人の自由・権利を保障しようという考え)を否定しようという意図が透けて、おかしさとともに恐ろしさを感じる名著だと思います。

 立憲主義や個人の自由・権利を憎んで、それらを否定する国にするのは国民の自由かもしれませんが、そのような国は、近隣にある一党独裁の国や祖父の代からの独裁をしている国みたいな国です。わが国が近隣にあるような独裁国家になってから後悔しても後の祭りでしょう。

 

 あたらしい憲法草案のはなし』を憲法の仕組みについてあまり知らずに読むと、皮肉をそのまま受け取ってしまうおそれがあります。

 憲法の仕組みについて、とても分かりやすく説明しているのが、内山奈月・南野森『憲法主義』です。ソフトカバー本が文庫本化していますし、読みやすいので、憲法改正の前に、多くの主権者国民に読んでもらいたい本です。憲法主義は、あたらしい憲法草案のはなし前に読んでおくべき本だと思います。