一人一票実現訴訟の提訴

 一昨日(7月10日)に実施された参議院議員選挙について、昨日、選挙無効訴訟を札幌高等裁判所に提起いたしました。

 NHKニュース北海道新聞などでも報道されています。

 

 選挙無効訴訟の形式上、北海道選挙区の選挙の無効を求めています。

 私の参画している弁護士グループでは、全45選挙区について8つの高裁(本庁)と6つの高裁支部の計14の裁判所に選挙無効訴訟を提起しています。

 私は、沖縄にいた平成21年(2009年)8月の衆議院議員総選挙の無効訴訟のときから参加しています。

 この選挙無効訴訟は、党派制のあるものではありません(そもそも2009年の選挙は民主党が勝って政権交代がなされた選挙です。どこが勝とうが負けようが、投票価値不平等の選挙はおかしいのです。)。

 

 選挙無効を求める理由は、選挙区ごとの一票の価値が不平等であるということです。

 今回の参議院議員選挙で議員1人あたりで最も選挙人数(有権者数)が少なかったのは福井県選挙区です。

 提訴では昨年9月2日時点の有権者数を基に計算して、福井の1票に対し北海道0.43票と表現しています。

 これは、次のように計算します。

 

福井の有権者数  644,447人、議員定数2(半数改選)

北海道の有権者数4,537,448人、議員定数6(半数改選)

 

議員一人当たりの有権者数

 福井322,224 北海道756,241(4,537,448÷6)

 

選挙区の有権者数の格差(較差)

 福井1に対して北海道2.347 (756,241÷322,224)

 

投票価値

 福井の有権者の1票に対して北海道の有権者の1票の価値は0.43票322,224÷756,241)

 

 

 こういった投票価値の不平等が放置されたままで選挙が行われると、

選挙区選出の議員の過半数を、

過半数に満たない国民の中から選出することになり、

全国民の代表として議員が行動する国会での議決が国民多数の意思あるいは支持、信任によるものといえるだけの

正統性を欠くことになるからです。

 別の観点でいうと、国民の多数の中から選出された議員が議会の多数派にならない選挙

間接的に民意を反映する議会を構成させる正当な選挙とは思われないからです。

 

 

 

 現在の投票価値の不平等の歪みは、次のような結果にも表れます。

福井県選挙区の当選者の獲得票数は、217,304票でした。

北海道選挙区の次点(落選者)の獲得票数は、482,688票でした。その次の落選者は239,564票でした。

福井の1票に比べて最も投票価値の軽い埼玉県選挙区では、次点486,778票、その次228,472票でした。

 投票した有権者数が少ない者が当選し、多い者が落選しています。

 

 もちろん、選挙区から1人を選ぶ小選挙区制と複数人を選ぶ大選挙区制の違いや、選挙区ごとの立候補者の数や投票率の違いがあります。しかしこのような差が生じているのはあまりに不平等です。

 

 

 

 参議院議員も衆議院議員も「全国民の代表」であって、都道府県の代表ではありません

 我が国は、都道府県の連邦ではありませんから、都道府県代表を選出する歴史的な根拠も無いです。

 あたかも都道府県の代表のように利益誘導を叫ぶ政治家(及びその政治家を議員にしてきた国民)が我が国を蝕んできたのだと思います。

 これまでの最高裁判例でも指摘されていますが、都道府県の区割にこだわっていては投票価値が平等の選挙区割りや選挙制度はできません。平成24年の公職選挙法改正のときに附則で平成28年の参議院選挙までに抜本的改正をすると決めたはずでしたが、まったく抜本的改正がなされませんでした。

 

 

 

 本当に選挙無効になったら国会がストップするのではないかと心配されるかもしれません。

 今回の選挙が無効となっても、参議院議員は比例代表で選出された議員と非改選の議員がいますから、その議員で構成する参議院と、衆議院で本当に抜本的な選挙区割りを最優先で早急に決めればいいのです。(暫定的にでも全国単一区での選出で再選挙でいいと私は思います。)

 

 

 

 今後、憲法改正を議論するのであれば、

現行憲法を遵守できるだけの倫理観と品位と知性のある者が議員であると同時に

選出される選挙に問題のない議員によってなされるべきです。

(衆議院も参議院もその選挙区選挙の区割そのものは憲法違反とこれまでの訴訟で判断されています。)

 

 少なくともまともな選挙制度での選挙が実施されるように、この訴訟を続けていきたいと思います。

 初回の口頭弁論期日は8月下旬か9月初めになると思います。初回期日で結審して、10月に判決が出ると思います。

 

 今後の報道等にご留意いただければ幸いです。

 

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弁護士 林 朋寛

(札幌弁護士会所属)

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